第17回 北海道生活科・総合的な学習教育研究大会

ワークショップ提言
 留萌地区

提言題 自分の考えをもち,多面的な視野で活動を続ける子供の育成
        〜「関わりあうこと」を意識した実践を通して〜

留萌地区 留萌市立沖見小学校 教諭 鹿島 嘉節

 提言は時そばの落語の話からスタートした。
 時そばという話は,「そばの勘定を巡る勘定のごまかしを目撃した男が,それにえらく感心して,自分も真似して同じことをしようとしたが失敗してしまう」といういう滑稽な話である。
 提言者である鹿島教諭はその話から「他人と同じことはもういいかげんにやめよう。」と参加者に強く呼びかけていた。子供たちは毎回違うので,前回うまくいったことがいつも通用するわけではないのだと。
 ただし,どんな実践にもつらぬく考え方として,いつも忘れてはいけない「5つの意識」というものを強く主張していた。
 5つの意識とは

 <5つの意識>
 ○目的意識
 ○相手意識
 ○方法意識
 ○状況意識
 ○評価意識

というものである。鹿島教諭の総合の取組では,毎時間のようにこの意識付けを徹底したという。総合的な学習は長いスパンで行われることが多く,この5つの意識,特に「目的意識」と「相手意識」を明確に持たせないと活動を続けていくことができないと言う。
 だからこそ,単元の最初の最初に『この単元でつけてもらう力』についてしっかりと子供たちに述べることを大切にしているらしい。
 鹿島教諭は「ゴールのないマラソン大会はしたくはないですよね。100〜80時間の学習をするのです。そのゴールを明確に持つためには,しっかりとした目的意識と他者意識を持たせないといけないのです。」と言う。
 子供たち一人一人が主体的に学習に取り組むために,自分の力で学習に取り組む態度と,多面的に物事をとらえることができるようにしたいとのことであった。
 また最近,総合的な学習に対する逆風が吹いていることに対して,「総合の創るということを面白いと考えて欲しい。自由に縛りなくできるのであるから,面倒だと思うのではなく,楽しむことが大切です。監督や演出家になることができる喜びがあるのが,生活科や総合的な学習の醍醐味なのです。」とも言っている。
 
 評価の部分では「3つの力」という項目を設定し,評価規準を明確に定めることを勧めていた。

<3つの力>

 ○自分で考える力
  3・4年
   ・自分がやってみたいことに向かって,最後まで主体的に追求することができる。
   ・学習を通して学ぶ喜びを味わうことができる。
  5・6年
   ・物事をいろいろな角度から見つめ,見通しをもって取り組み,
    課題を広げたり深めたりしながら主体的に追求することができる。
   ・活動を振り返り,より良く修正することができる。

 ○かかわる力
  3・4年
   ・他と進んでかかわり,意欲的に学んだり意見を出し合ってまとめたりして
    学習を進めることができる。
   ・話し合いを自分たちで進め,活発な意見交換ができる。
  5・6年
   ・他と進んでかかわり,学習したことをもとに,
    新たな考えを生み出すことができる。
   ・建設的に意見交流を通して方向性を見出すことができる。

 ○表現する力
  3・4年
   ・各教科で学習した内容からより良いものを選択し,
    要点を押さえてわかりやくす表現することができる。
  5・6年
   ・これまでの学習で身につけたことを生かし,
    自分の考えを伝えることに効果的な方法で表現することができる。
 
 さらに,授業を組み立てるポイントとして次の7点を挙げていた。あらゆる教師のかかわりは,意図的であり次の展開に生かされるものでなければならないと!!

○活動を支える7つのポイント

 @計画とゴールを明確にし,「立ち位置」をつかませる
 A情報の必要性を考えさせる
 B意志を持って活動させる
 C情報は,考えるための一手段
 D見通しをもたせる
 E計画を絶対視しない
 F「5つの意識」をもたせる

 7つのポイントを説明した鹿島教諭は,「子供たちはなかなか主体的な活動ができない。だからこそ,意図的な指導がいるんだ。」とい言う。

 そして,実践の話になった。

 単元は『世界のために今,私たちができること』〜後進国のために私たちのできる限りの努力をしたい〜というものであった。後進国という言葉はあえて使ったとのことである。このサブタイトルを作るだけで1時間の授業を使ったという。彼の言う,「準備(テーマの意識化)にじっくと時間をかけることが必要である。」という主張がしっかりとなされていることになる。具体的には募金活動をしたのであるが,「親からもらったお金ではだめだ!!」という子供たちの強い思いから,野菜を自分たちで育て(夏休み期間なども当番を決めた),それを売ったお金をユニセフに募金したのであった。
 その目的を達成させるための,計画の段階で子供たちは数ヶ月先までの活動の計画をカレンダーに記入したそうである。
 さらに,活動を進めながら毎回のように進み具合を確認し,計画に修正を加える時間などもきちんと確保したとのことであった。
 野菜を売って得たお金の募金も子供たちは直接ユニセフへ持って行ったそうである。
 
 最後に「手間のかけ方で,子供たちの笑顔はかわる。」という言葉を残し,提言は終了した。



                                      (文責  道情報部 紙谷健一)